Ⅳ-1-1 T農園でのお手伝い開始!
扇状地の先端部分なので、T農園からは、天気がいいと雄大な富士山の姿を眺めることができます。
畑のなかを吹きぬけるそよ風が、体を突き抜ける感じがして、とても心地がよいところです。
ですが、そんなT農園も、最初は苦難の歴史がありました。
Tさんが小学校5年生のとき、アジア太平洋戦争、終戦。
ご家族で、中国大陸から引き揚げてこられます。
その後、新たな開拓地として行政から提示された3か所のなかから、Tさんのお父さんが選んだのが、現在T農園のある、旧牧丘町だったのです。
Tさんが中学生になったばかりのころ引っ越してきた現在のT農園には森が広がっていて、農地はありませんでした。ご家族総出で、開墾していかれたのです。
Tさんのご自宅前には、大小の岩がたくさんあるのですが、これは、開墾の際、いまは畑となっているところから掘り出されたものです。こんなにたくさんの岩を、ご家族だけで移動されたのか、と想像すると、それだけで、ご苦労はどれほどのものだったのだろうと心苦しくなります。
2023年3月16日。そんなT農園で始まった最初のお手伝いは、カヤ集め。
Tさんが草刈り機で刈られたカヤを集め、畳のひも(畳縁=たたみべり)でくくった後、それを持って斜面を登り、道路わきまで運びます。
古くなった畳縁にも、こんな活用法があるんだ~などと思っていられるのは最初だけで、斜面を上り下りするたび、日ごろの運動不足がずしんと体を重くしていきます。
刈り取ったカヤは、畑にばらまき、Tさんが運転するトラクターで、バリバリと粉砕されていきます。
自分の家の畑脇に生えるカヤを、畑の栄養として漉き込む農法。
まさに、地域で資源を循環させる農法です。
澤登先生がおっしゃる、「茶草場農法(世界農業遺産となっている静岡県のお茶の産地の農法)の野菜版」が、T農園では実践されています。
「ほんとうなら、静岡の茶草場農法で使われているカヤの粉砕機が欲しいんだけど、100万円もするんだよね。ちょっと無理だな。」
と仰るTさん。
このときの言葉を、1年半たって思い出しながら、いまはこう思っています。
〈もしも、カヤ粉砕機と、雑草用の電動バリカンとの中間に位置する粉砕機があったら、どんなにいいだろうか・・・〉
工学系の研究室で、どなたか、開発してくださらないかな?と淡い期待を抱きつつ・・・。
それはともかくとして、この日は、太陽の日が落ちるころ、Tさんが薪でお風呂を焚くのを少し手伝ってから、お暇しました。
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