Tさんとの出会い
私のかかわっている実習科目は、新型コロナウイルスのパンデミックや、担当教員のあいつぐ定年退職によって、遠い場所での実施が困難になっていました。
でも、科目の運営は続けなければなりません。
新年度の授業は、どうしよう?
こういう難問を前に、残った4人の担当教員間で話し合った結果、担当仲間であるT先生が思いついたのが、旧カリキュラム時に、修士課程の専攻横断型履修プログラム「地域活性化プログラム」の実施でお世話になり、その後、農学部との協定も結んで頂いた、山梨県山梨市での実習の実施でした。
地域活性化プログラムでは、山梨市にお住いの澤登早苗先生(現・恵泉女学園大学名誉教授)にエスコートをしていただき、本当にお世話になっていました。その時の実習内容が、修士課程の再編で途絶えてしまっていたので、学部の実習に取り込んではどうか、という発想です。
「それはいいアイデアですね!」という話になり、さっそく、T先生から澤登先生に実習の実施をご相談頂いたところ、澤登先生が東京農工大学大学院・連合農学研究科(博士課程)の1期生でいらっしゃるというご縁もあり、快くお引き受けくださいました。
そして、実習のための相談をさせていただいた、2023年2月13日。
澤登先生から、私のその後の研究を左右する、興味深いお話を伺うことになったのです。
山梨市と合併した旧牧丘町には、1992年に発足した「牧丘町有機農業研究会」という組織があり、有志の農家の方がたが、有機農業に取り組まれてきたそうです。
そのような農家さんのなかから、澤登先生に、T農園のことをご紹介いただきました。
旧牧丘町は、町全体が扇状地です。T農園は、その扇状地の頂上部分にあって、設立時から牧丘町有機農業研究会のメンバーであるTさんが、かなり面白い実践をされているというのです。
Tさんの農園の土は、裏山でとれた落ち葉、カヤや、知り合いの鶏卵農家からもらった鶏糞、ブドウ農家からもらった剪定木の灰など、まさに地域の自然や農が生み出した豊かな資材が漉き込まれているというのです。
しかも、そうした農場で採れた野菜の一部は、地域の学校給食の食材として生かされることが、市議会でも承認されたというのです。
澤登先生のお話を伺って、
〈T農園を軸とした取り組みは、まさに、環境省の提唱する「地域循環共生圏」ではないか!〉
そう思いました。
ところが、「御年90歳のTさんには引き継ぎ手がいない、学生さんたちが手伝ってくれるといいのだけれど・・・」と仰る澤登先生。
そのお言葉を伺いながら、
〈これは、私自身がやるしかないのではないか?〉
と、いつの間にか奮い立っている自分がいたのです。
そこで、澤登先生にお願いしてTさんと連絡を取っていただき、2023年の2月から、長男、次男を誘い、まずは家族で〈農〉のお手伝いをするようになりました。
そしていまでは、有志の学生たちと一緒に援農に伺いながら、有機農業とは何か、地域循環共生圏とは何か、といったことを学ばせて頂いています。
ここ「Ⅳ-1」では、そのようなきっかけで始まったT農園での実践と、そこから考えたことの記録を、随時掲載していきます。
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