Ⅰ-2-1 鈴なりだったキュウリ
人はなぜ、〈農〉をするのか?
この問いについて探究するため、できるならばやはり、自然科学の力に頼れるようになる前の時代に、人びとが実践していた農法に近い形で、野菜の実をならしてみたいと思いました。
なぜならば、化学肥料や除草剤などの農薬がないニュートラルな状態で、人はどうやって農作物を育てていたのかがわからないと、人をそもそも〈農〉的存在としてみる考察は難しいと思ったからです。
そこで、今年、野菜を圃場で育てるにあたりこだわったのが、農薬に頼らない、ということでした。
野菜の肥料としたのは、刈った草、刈って頂いてきたカヤなどの自然生態系由来の有機物、そして、頂いてきたもみ殻など、農業の副産物として出た有機物です。
だから、今年の農法は、有機農法(のなかでも自然農法に近いかたち)で実施した、ということになります。
まずは、ゼミ生のYさんのお力もお借りしながら、夏野菜を育てました。
そのなかで、いろんな気づきがありました。
まず紹介したいのは、キュウリです。これが見事に成功して、8月に株が力を失うまで、たくさんのキュウリをつけてくれました! 鈴なりでした。
写真は、7月27日、麻ひもで網をつくってみたあとの写真です。できることならなるべく天然由来の素材を使おうという話になり、縦糸、横糸を麻ひもで作りました。最初の作業は、一部、基礎ゼミのみなさんも手伝ってくれました。
はっきりいえば、7月末に網を作るのは遅いのですが、前期にたくさん授業があった私がYさんに相談するのが遅く、夏野菜の植え付け自体が全体的に押してしまったのです・・・反省。
それでも、たくさんの実を鳴らしてくれたキュウリさん!
嬉しかったのですが、始める前、実は少し不安がありました。
お借りした圃場は、数年の間、放置されていた場所です。草ぼうぼう。
なので、まずは草むしりから始まった、という経緯があります。
放置されていた場所は、ずっと雨に打たれていた、つまり、土壌が酸性に傾いている可能性があります。そこで、Yさんが用意くださった試験液で酸性かどうかを調べてもらいました。
そうしたら、やはり少し酸性に傾いていました。
キュウリは酸性土壌だとよく育たないので、苦土石灰を撒いて畝を立てました。
それが、功を奏したのかもしれません。
とにかく、数年間放置されていたために、おそらくそれまでの化学肥料が洗い流された農地で、あらたに化学肥料を施すこともなく、自然由来の肥料(?)だけで育ったのは、本当にうれしかったです。
ただ、苦土石灰をまいたということは、完全な自然栽培には程遠い、ということも知りました。
自然栽培をつづけ、土壌が「中庸」になっていけば、石灰を撒く必要もないという考え方を知ったからです。
※瀬戸内マイファームの高内さんのYoutube動画を拝見して知ったはずなのですが、見つからなくなっ
てしまったので、見つけ次第情報をアップいたします(すみません)。
「中庸」。あの有名なギリシアの哲学者・アリストテレスが、主著『ニコマコス倫理学』のなかで、どういう正義がよいものなのか、を判断するときの基準として提起している概念です。
それが、江戸時代の人びとの、〈農〉をうまく実践するための経験則にもなっていたなんて!
〈農〉は本当に、奥が深い。まだまだ知識も経験も足りません。
すこしずつ、いろいろ学んでいきたいと思います!
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